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代表コラム11月号「適時教育の向こう側にあるもの」

 御調みくに幼稚園が開園して7ヶ月が経った。子供達は日々読み書き計算音楽体操に取り組み、成果を上げつつある。
 読みは「百花繚乱」「一衣帯水」「千紫万紅」などの四字成語、「我が身をつねって人の痛さを知れ」「読書百遍意自ずから通ず」などの諺に親しみ、毎日声に出して覚えたそれらを言っている。近々論語の素読も始める予定である。「幼児にとって漢字の方が分かりやすい」という石井勲先生の見解は自分も漢字が好きということもあり実践以前から分かってはいたが、楽しそうに漢字仮名交じり文の絵本に集中し取り組む子供達の様子を見ると改めて漢字で伝えることの意義を認めずにはいられない。
 また、子供のうちに質の良い日本語を何度も音読し、身体感覚になるまでにしておくことの大切さは『声に出して読みたい日本語』で有名な斉藤孝氏もおっしゃっていたが、質の良い日本語の大量のインプットがあって質の良いアウトプットが出来るというものである。質の良い日本語を身体感覚として宿す子供と貧相な語彙で生活する子供の思考は決して同じではなかろう。人は言葉で物事・世界を捉える生きものであるからだ。
 現代使われている言葉の中にも素晴らしい言葉はあるが、特に古文・漢文はリズムも意味も洗練されている言葉が多い。『論語』はその最たるもので、企業の経営者の多くが愛読している位だ。江戸時代の子供のように現代っ子が『論語』を読むのは難しいのだろうか。確かに意味も理解しながらとなると難しいであろう。でも音・響きを味わうだけなら誰でも簡単に出来る。特に先入観の少ない幼児は白文の漢字(という形)を見てスラスラ詠じる。幼い時は意味を理解する必要はない。身体感覚として取り込まれた『論語』やその他質の良い言葉が思春期を過ぎる頃に立ち上がるのである。いわば自身の体内に取り込まれた言葉の多くが自分の人生を照らす灯り・師となり人生の重要な場面で正しい方向を示唆してくれるのである。身体感覚にまでなった古文・漢文が高校以後「単なる受験のために覚えるもの」を超え、「生きた灯り・師」といったリアルなものに解凍されることを密かに期待している。
 書きでは棒線一本から始まり次第に複雑な仮名へ移行していく。幼稚園でのこの活動は字を美しく書くためのお稽古ごとではなく自学自習の姿勢・集中力の涵養が目的であるため、とめ・はね・はらいの正確さは問題ではない。自ら集中して取り組めていさえすればよいのである。
 現在は算盤の珠を数え、ゲームのように展開している数(計算)も論理的思考を求めるものでなく、遊びのうちに自然と身に付くよう展開している。それも書き同様集中して取り組む姿勢を身に付けるものであり、小学校の先取り学習ではない。一見、小学校の算数の授業に見えるかも知れないが、目的は自学自習の姿勢・集中力の涵養である。この点では土堂小学校のモジュールの授業と似ている。
 音楽や体操もそれぞれ基本的なカリキュラムを作成の上、子供達の状況でそれを時々見直しながら日々行っているわけだが、これらの活動の総合的目的は「(生まれ持った)運動神経や自己学習能力及び自立精神を最大限に高める」ことと「社会の中での役割を考え自ら行動出来る力を育む」ことにある。
 運動神経や音感などは目に見える成長として分かりやすいが、メンタルな成長はなかなか目に見えるものではない。だが先日このメンタル面での成長をかいま見られる場面が体操の取り組みの中で見られた。それは片足あげブリッジに取り組んでいた時のことである。「A君、昨日より上がるようになったね」と言ったところ、A君は自分が認められたことを喜ぶより「Bちゃんすごいよ。昨日上がってなかったのに今日上がるようになってる!!」とまるで自分のことのように喜んでいたのである。その際「よく見ていたね。確かにすごく上手になっているね」と応えながら、内心「そういうことを言えるA君、君が一番イケてるよ」と嬉しく思っていた。
 私は烏合の衆を作っても意味がないと常々思っている。友達・仲間を想い、顔・声・個性がマインドの中で生き続けるような関係を彼らが今後の人生で構築していくことを願っている。そこでの誰彼は代替がきかないかけがえのない存在である。顔の思い出せない友人(たまたま同空間にいた)○○でなく、先述の三つを伴って思い出せる□□君△△さんである。そのための第一歩として友達を認める、頑張っている友達を見て心から「すごいな」と驚嘆出来る感性は非常に大切である。その感性を持ち成長すれば、大人になっても豊かな人間関係を構築出来るであろう。多少合わないところがあっても部分部分で尊敬し合える関係を創っていけるであろう。その感性は今後も様々な活動の中で発露するであろう。その瞬間に立ち会える私達は幸せである。今後も互いが互いを更に認められる集団になるよう日々の実践を行っていこうと思う。

御調みくに幼稚園

代表 玉崎 勝乗