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みくにコラム12月号「Viva music!!」

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 先日近隣の街で音楽講師の方々によるピアノコンサートが開催されました。縁あってこのコンサートを聴きに行ったのですが、とても素晴らしいものでした♪
 プロジェクターで『くるみ割り人形』の名場面がシアター風に映し出され、まるで絵本を読むようにナレーションが始まりました。そしてその場面のナレーションが終わると今度は舞台袖から2人の美しいドレスを着た先生方がたおやかに登場します。静かになった会場に椅子を調整する音だけが響きます。
 そして2人顔を見合わせピアノ連弾「小序曲」が始まりました。そして演奏が終わると聴衆の拍手に一礼すると何事もなかったかのように舞台を後にします。終始そのような調子で展開され、私達もよく知る金平糖の精の踊りや葦笛の踊り等が演奏され、あっという間に花のワルツのエンディング…いつまでも聴いていたい素敵な演奏だったのですが、時間は無情、第1部の幕は下りました。
 それから休憩をはさんで、コンサート仕立ての第2部の始まりです。ショパンの英雄ポロネーズから始まり、リストやモーツァルトの聴き親しんだ曲の数々が演奏され、最後はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番作品18第1楽章でした。2台のピアノのためのソナタニ長調KV448より第1楽章ではスタインウェイとヤマハのそれぞれ最高峰モデルの競演を楽しむという趣もありました。
 でも一番心に残ったのは普段ピアノを教えている先生方の「音楽って最高!!大好き!!」という気持ちが表れた音や演奏の姿でした。肩や足でリズムをとりながらピアノに指を滑らせる姿、連弾で同時のフィニッシュに恍惚とする姿は普段の先生という印象は一片もなく、ただただ音楽を愛し、弾くことに喜びを感じる演奏家の姿を見たように思います。
「そう、音楽って楽しんだもの勝ち。とやかく言うのは評論家に任せておけばいい。ただただより楽しむために腕を磨いていけばいい」ということを教えられた気がしました。会場には多くの子供達も来ていましたが、純粋に音楽を楽しもうとする姿勢の体現にきっと私のような気持ちになった子供達も少なくないと思います。
 人に大きな喜びや感動を与えることを実践するには膨大な時間が必要です。今回のコンサートで演奏した先生方もそこに至るまではいろいろ紆余曲折があったことだろうと思います。それでも多くの子供達に喜びや感動を与える演奏をするまでに至ったことはとても素晴らしいことだと思います。
 これはどんなことにも言えることと思います。私達は幼児教育に携わっていますが1日で子供達が劇的に成長するような特効薬は持っていません。しかし1日1日の関わりを大切にしながら、一人ひとりの伸びようとするタイミングに適切な環境を設定し、伸ばすことは出来ます。1日の伸びは、ほんの数ミクロンかもしれません。それでも私達が根気強く子供の能力を信じ、その時期その時期に合った、ちょっと頑張ればクリアー出来る環境を設定し続ければ子供達は面白いように自身で成長しようとします。今回は音楽について主に触れているので、その事で話しますと、1学期ミとソを混同し聴音(先生の弾いた単音に反応する取り組み)がままならなかった子供も2学期も終わりの頃になると混同しなくなり、和音も聴き分けるようになってきました。やはり毎日の積み重ねが大事だなぁと実感します。
 基本的には出来ることを日々繰り返しやり時々ちょっと難しいことに挑戦するので、常にやる気を保つことが出来ます。いつもいつも簡単なことばかり、または難しいことばかりやると飽きたり諦めたりします。適切な環境を与えることをせずに「教え込み」をしようものなら子供達はその取り組みを嫌いになってしまいます。音楽でしたら2度と歌ったり弾いたりしたくないと思うでしょう。ですから子供の特性を鑑みることをしないで、そうするものだからで取り組んでしまうことは殊幼児教育においては害にさえなるのです。将来子供達が興味を持ちうる分野を私達の無責任な関わりで潰してしまうわけにはいきません。
 将来的には自身で意識して多大な努力を払い、自らを伸ばすことが必要な時もあるでしょう。けれども幼児期は違います。自分の意思でちょっとだけ難しいことに挑戦し、クリアーする喜びを多く体験する期間でいいと思います。立ち向かい、挑戦した後に「充実感」というご褒美があることを体感的に知っていくことが大事なのです。多大な努力を払い、自分を高みにもっていくことはもっと後からでいいと思います。
 子供達には将来自分の知的好奇心や裡なる声の導きによって、地道な積み重ねを実践し、この度のピアノの先生方のように他者に喜びや感動を与える存在になって欲しいと思います。 (了)