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みくにコラム2月号「歌の効能」

 カラオケは日本発祥のサブカルチャー(大衆文化。副次文化)です。外国でも「KARAOKE」「卡拉OK」などと日本語の発音をあてて表現されています。最近では機器の性能が昔よりかなりアップし、曲数もかなり増えたようです。中にはゲームセンターの音楽ゲームさながらに音程を意識して歌い、それで採点されるというシステムも出て来ました(バラエティ番組等でご覧になった方もおられるでしょう)。60年代後半に現在のカラオケの前身になる機器が発明され、70年代に今のようなスタイルになったといわれています。それ以降全国各地に広がり、機器の方も独自の進化を遂げてきたことは周知の通りです。
 ではどうしてここまで多くの人に愛されてきたのか。それは「歌う」ということが本能的喜びをもたらすからだと思います。近年では福祉施設においても導入され、音楽療法の一環として用いられることもあるようです。またストレス発散に大きな効果があることも分かっています。

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【歌うことでストレスが発散されるといいますが、これは大きな声で歌うことで同時に脳全体が活性化されるからです。脳内ホルモンが分泌され、マラソン選手などがよくいう「ランナーズハイ」に似た状態が起こります。この「心地よさ」は日常での喫煙や飲酒でも体験できます。しかし一過性でしかないうえに、体にあまり影響がよくありません。
 カラオケはお腹から大きな声を出すだけで運動になり、一曲歌えば100m走るのに匹敵する運動量になります。有酸素運動となれば筋肉の血管の収縮運動も行われて、血液循環の中心である心臓の働きが活発化して血液循環が良くなります。この運動には内臓脂肪を燃焼する働きもあるので、ダイエット効果もあります。
 またカラオケで上手に歌うには腹式呼吸が欠かせません。腹式呼吸は、腹筋を使うので新鮮な酸素を大量に体内に取り込むことができる方法で、老廃物を排出することができます。
 また、この健康法は睡眠時無呼吸症候群の予防や改善にも大変よいので試すことをオススメします。(web「病院検索JAPAN」http://www.zero-dr.jp/news/070110-3.html より)】

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 前置きが長くなりましたが、私はここでカラオケの普及に努めているわけではありません(笑)大人にとって「大きな声で歌うことで同時に脳全体が活性化される」と言われている歌唱が子供達にも当てはまるということが言いたいのです。

 しかし子供の場合の理想形は大人とは少し違います。子供の場合は「大きな声で」ではなく、「集団で」「優しい声で」歌うのが良いのです。頭声的発声で一人一人から発せられる歌声は音程が一律に合えば音叉のような響きを以て空間に広がります。心地よい響きは更に脳を活性化します。「歌うこと」「聴くこと」の二重の感覚的体験は、大人がカラオケで得られる快感の比ではありません。
 当園の園児が合唱をしている時の表情を見ていても分かるのですが、音を感じ、その音程に合わせようと自らしている姿は尊いものです。音程が合うことの心地よさを知った園児は、初めて歌う歌でも数回の練習で歌詞付きで歌うに至ります。もちろん音程も自然と意識しているので、大きく外すような子はいません。誰から教えられるわけでもなく、音程を合わせて歌わないと気持ちのいい響きが得られないことを経験則で知っているのです。合唱体験の真骨頂はまさしくここにあり、取り組みの過程で協力し合うことの意味を体感的に知っていくことにあります。
 日々行っていく合唱体験で得られるものはこうした「協働への姿勢」ばかりでなく「美醜の感覚」もあります。美しい歌声の響きの中、自らもその響きの一つとなる中で、子供達の美的感覚は磨かれていきます。もちろん一朝一夕に磨かれるものではありませんが、日々の積み重ねの中で少しずつ磨かれるのです。イメージとしては、大人が茶道や華道等に取り組む中で心を整えていくのに似ている感じでしょうか。私は幼少期に身に付けた「美醜の感覚」「剛毅か卑怯かを感じられる感覚」は一生モノだと思います。まるで植木の剪定鋏を内在化するようなものです。成長の過程で悪の方へと伸びようとする枝葉を自ら剪定することのできる鋏。これを幼児期に身に付けることは非常に大切なことだと思います。 

 ここまで「歌うこと」の素晴らしさを大人の場合、子供の場合で見てきました。子供は大人と違って個人で歌うより、大勢の友達と響き合いながら歌うことを好みます。もし子供会やご自宅等でお子様とカラオケをする機会がありましたら、音程を意識し声を重ねてみてはどうでしょう。保護者の方とのハーモニー(調和)に子供達も内心興奮することでしょう。やがては日本を代表するサブカルチャーであるKARAOKEの発展に寄与してくれるかも…しれませんね(笑) <了>