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代表コラム1月号『試されているのは大人の待つ度量』

 今年度も残すところあと3か月となりました。日々、子供達は園庭を走り、ルールを守りながら体育をしています。思うように出来ないと「ハイ!!」と自分を鼓舞するように声を出し、繰り返しています。綺麗な形でする友達に憧れ、壁逆立ち歩きやブリッジ、側転等に真剣な表情で挑戦しています。

 また漢字絵本や書き方練習も毎日行なっています。その時、余計な声を出して邪魔するような子は皆無です。かといって“やらされている”という感じでもありません。子供達は読み終わったり書き終わったりすると次の本や課題に嬉しそうな表情で取り組んでいます。

『本物』はいつの時代でも圧倒的です。生まれ持った天分を日々伸ばし成長してきた子供達は「環境をきちんと設定すればここまで伸ばすことが出来る」ということを体現した『本物』ぶりを発揮してくれます。そうした姿を観ると、私も思わず目頭が熱くなります。

 とはいえ、これで目一杯とは思っていません。子供が自ら伸びようとした時の力は大人の想像を超えるものです。では更に伸びるよういざなうにはどうすればいいでしょうか。

 

 その鍵となるのは、「過干渉の忌避」と「成功体験の繰り返し」だと思います。
 子供達は元来【真似をすること】【繰り返すこと】が大好きです。今日は出来なくても、飽きもせず毎日毎日何度も何度もお友達の真似をして繰り返し、やがて習い性にしてしまいます。周りの大人はいい見本を示し、後は見守るだけです。

 それをあれやこれやとやかましく口出しし「楽しい活動」から「嫌々する活動」にしてしまうと繰り返すどころか、「面白くな?い!!」「嫌だ!!やりたくな?い」と子供は拒絶反応を起こすようになります。これは大人でも同じだと思います。一所懸命レシピと睨めっこしながらお菓子を作ろうとしている時、もっと焼き加減は控え目にした方が良い、砂糖をもっと、チョコはたっぷりと…等と言われ続けたら「なら自分で作れば!!」と投げ出したくなるのではないでしょうか。

 お菓子を作る過程では任せてもらえ、いただく時に「美味し?い♪焼き加減がもうちょっと控え目だったら毎日でも食べたいくらい」と言われたら、またすぐにでも挑戦したくなりますよね。子供も同じで、褒められたら自分の惜しいところを修正してまたやろうとするのです。大人より素直な分、何度も何度も集中してやろうとします。

 

 そして繰り返すうちに洗練されてきたことを子供達は“感じ”ます。本物を見る目、感じる目は大人に負けていません。大人が「もうこれでいいのでは?」と思うレベルになっても繰り返しの中で感覚まで洗練してきた子供達は満足しません。更に高みを目指そうとするのです。

 

 私達大人の仕事、それはあれこれ口を出したり出来ることまでやってあげて子供が試行錯誤する機会を奪ったりすることではありません。

 子供の現状をすべて受け入れた上で、夢中になって繰り返すことの出来る環境を設定することだと思います。成功体験が重なってくると先述したように感覚まで洗練され、安易に満足しなくなります。そうなっても、大人はその子にとってちょっとだけ難しい環境・課題を設定し、子供の頑張りを見守ればいいのです。

 案外干渉せずに待つことは難しいものです。ついつい「焼き加減は…」「チョコは…」「デコレートは…」と口出ししたくなってしまうものです。しかしそこは我慢。失敗しても「どうすればもっと美味しくなるかなぁ」「どう工夫すれば美味しそうに作れるかなぁ」と本人が考えられる【間】が必要なのです。

 子育てをする中で試されているのは、案外親や教諭が「どれだけ子供の力を信じて待てるか」という度量なのかもしれませんね。<了>