園長コラム 11月号 「遊べる子になるために」
園では毎朝瞑想立腰、四字成語や百人一首、論語の素読を行い、体育では側転やブリッジ回転、跳び箱や縄跳びなどに挑戦しています。音楽の活動(ミュージックステップ)も毎日行い、音感が定着してくるのに従い、子供達は先生のピアノになぞらえてピアニカを弾いたりソルフェージュ唱をしたりします。
園見学をされた方は「素晴らしい!!きちんとステップアップしていくとここまでのことが出来るのですね!!」「さっきまで天真爛漫に外遊びしていた子供達と同じとは思えないです。サッと切り替えられるのがすごいですね!!」と感心されるか「子供にここまでのことをさせる必要があるのでしょうか」と否定的に観るかのどちらかに二分されます。
私としては天真爛漫に外で遊んだり友達と些細なことで諍ったりするのも子供、一つのことに集中し安易に声を掛けることさえ憚られるような表情を見せるのも子供、どちらも【子供らしさ】だと思います。もし教育関係者(教育を生業としている者)が「無邪気に遊ぶのが子供だ」というイメージを持っているとしたら、それはプロらしくない、子供の秘めた才能を低く見過ぎた考え、薄っぺらで貧相な子供観だと思います。
確かにごっこ遊びやボール等を使った遊びの中で多くのことを学べる子供もいます。ただし全員ではありません。どうしていいか分からず漠然と遊ぶ子供やリーダー格の子供達に促されて受け身で遊ぶ子供も多いのです。そのような環境下で幼児期を過ごした子供達が、天分を開花させ自ら伸びるようになるとは到底思えません。「クリエイティブ(創造的)に遊び、学ぶ」というのは口で言うほど簡単ではありません。「興味を持ち、集中し持続し挑戦する力」なくして【遊びの中で学ぶ】という域に到達することは出来ないからです。私達の考える【遊び】は「精神の高揚や充実感に満たされながら行う活動」です。
もし【遊びの中で学ぶ】ことが出来れば、それはやがて様々な分野に派生し、ワクワクしながら算数・数学の難問に挑戦し解くということに繋がったり、前に進む確かな実感を抱きながら球技等スポーツの技能を高めることに繋がったりします。針の穴を通すような感覚で何度も挑戦し、解った時出来た時は何とも言えない達成感を感じることも出来るでしょう。そういう感覚を知っている子供達にとって遊び、勉強といった「カテゴリー(分類)分け」は大した意味を持ちません。なぜなら彼らにとって勉強もスポーツも音楽も知的好奇心を満たしてくれる【遊び】だからです。
充実した小学校生活~大学生活、社会人生活を送るためにも「興味を持ち、集中し持続し挑戦する力」を養い、【遊びの中(遊び感覚)で学ぶ】ことの出来る基盤を幼児期学童期に形成しておくことが肝要だと思います。
幼稚園での活動もそれを目的としたものです。一生という期間の中、自分流のやり方で大いに遊んでもらいたいと願いながら、日々実践を重ねています。