園長コラム12月号「適時教育の実効性に不可欠なこと」
御調みくに幼稚園で日々実践している教育は【適時教育】と言い、「ちょうど適した時期に、ふさわしい環境を設定することで子供達を伸ばそう」とする教育です。
例えば「体育遊び」だと年少のうちにたくさん走ったり柔軟体操をしたりします。どの位繰り返せたかにより年中時の伸びに差異が出てきます。また年中時に一通りの運動を体験します。ブリッジ回転や跳箱の基本形を覚えるのもこの時期です。そしてある程度の基本を体得した後、年長になって磨きをかけていきます。
この考え方はMS(ミュージックステップ)や他の活動にも及び、《無理なく、挑戦を楽しみながら「出来た」》という経験を子供達は繰り返し味わいます。ポイントは「子供達にとって、簡単過ぎないか難し過ぎないか」ということ。簡単過ぎると飽きてしまいますし、難し過ぎると挑戦意欲が失われます。一人一人にとって「少しだけ難しい」という環境設定をすることの意味がそこにあります。
子供達は、日々挑戦を繰り返し、時に達成感を感じます。達成感は自信に繋がり、「諦めずに何度も繰り返していくとそのうち出来るようになる」ということが身体感覚で理解出来るようになります。不断の挑戦で課題をクリアした子供は、貪欲に次の挑戦に向かっていきます。一人一人の状態によって課題が違うだけで、皆それぞれの課題を持っています。
そういうこともあり、自分が出来るからといって他の子供を馬鹿にするような子供はほとんどいません。もし馬鹿にするような状況があれば、それは私達がその子供に対してワクワクするような環境を設定出来ていないことも要因の一つだと思います。
私達の実践の目的は「自信をつける」だけではありません。基本姿勢を正し、集中状態の中で挑戦する癖をつけることで、集中力と弁えを自然に身につけられるようにします。その上で、「天分を最大限に伸ばし、知性と体力の備わったバランスの良い人物として世の中に貢献出来る人物となれるようその基礎を培う」ことを目的として日々実践を行なっています。
しかしその目的の成就には保護者のご協力が不可欠です。
保護者の皆様の中には、「今日は何が楽しかった?」「えぇ~もうそんなことが出来るようになったの!!」などと園の方針をよく理解してくださった上で、子供達の頑張りを認めてくださる保護者の方も多く居られます。朝送る際「楽しんできてね♪」と子供を送り、迎えの際は「何が面白かった?」「今日も楽しめた?」とポジティブな声かけをしてくださいます。
そのことにより子供達は健康な気持ちで実践に向かうことが出来ます。
逆に子供の前で親が先生の悪口を言ったり、「何か怒られた?」「何か嫌なことなかった?」と訊かれると楽しかったことの報告を引っ込め、親の期待に応えようと子供なりにネガティブなことを一所懸命探して答えようとします。ポジティブな言葉が心を浄化するのに対し、ネガティブな言葉は知らず知らずのうちに精神を病ませます。
適時教育の実践をより実効性のあるものにするためには、保護者の理解に基づいたご配慮も不可欠なのです。